ブリティッシュスタイルって何?スーツの特徴と着こなし方

昨今はビジネスやパーティーなど、日常生活からフォーマルな場までスーツを着用する機会が増えています。
スーツにも種類があり、基本的に自分の好みで選択しても問題ありませんが、1着持っていると便利なのがブリティッシュスタイルのスーツです。

今回はスーツの代表的なスタイルである、ブリティッシュスタイルについて紹介します。また、英国式スーツの魅力や起源、そしてコーディネートのポイントなども解説するため、ぜひ最後までご覧ください。

ブリティッシュスタイルとは?

イギリスで生まれたスーツの様式のひとつで、英国紳士たちの間で現在でも愛されているスタイルです。
イギリスの気候に合わせて作られており、イギリスと似た国民性で、かつ気候条件も近い日本でも、受け入れられやすいスタイルとして知られています。

英国式スーツの特徴は、重厚な鎧にもたとえられる構築的なデザインです。肩にもしっかりとしたパッドを入れるので、上部が立体的なシルエットになります。
ウエスト部分も高めの位置で絞られており、高さのある胸元とのメリハリが逆三角形を描くことで、スタイリッシュに見えるのも特徴です。

また、イギリスの生地は打ち込みが強く、ずっしりとした質感をしています。そのため、生地自体に形を維持する強さがあり、仕立ての際に着る人の体型に合わせた理想的なシルエットを作ることが可能です。

ブリティッシュスタイルの起源

スーツというファッションスタイルは、200年ほど前のイギリスで生まれました。当初は王侯貴族が着用する正装でしたが、徐々に庶民の間にも広まっていき、現在では日本をはじめ、世界中の人たちの間で着用されるようになっています。
そんなスーツのルーツともいえるブリティッシュスタイルは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。以下、英国式スーツの起源について解説します。

フロックコートからスーツへ変化

そもそもスーツは、16〜17世紀頃のヨーロッパで下層階級の農民達が農作業をする際などに着用していた、フロックと呼ばれる衣服がルーツとされています。
本来は、粗末な素材で作られていた作業着を上質な素材で仕立てたものが18世紀頃から浸透し、フロックコートと呼ばれるようになりました。

そこから、動きやすさを重視して改良されたモーニングコートや、燕尾服として知られているイブニングコートなどが登場します。
そして18世紀中頃、正装とは別にリラックスして過ごすために使用するラウンジスーツが普及しました。このラウンジスーツこそ、現在多くの人に着用されているスーツの原型です。

19世紀に入ると衣服の大量生産が可能となり、それまで貴族しか手に入れられなかった新品の衣服が、庶民の間でも手軽に入手できるようになりました。そして19世紀後半になると、世界中でスーツが着用されるようになったのです。

ちなみに、日本でも1858年の鎖国終了による外国との貿易開始をきっかけに、スーツの歴史が始まっています。富裕層を中心に少しずつスーツは浸透していき、1887年の明治維新以降には、一般男性の間でも着用されるようになりました。

ブリティッシュスタイルの派生

ブリティッシュスタイル以外にも、現在は多種多様な様式のスーツが誕生しており、それぞれ異なった魅力を有しています。
英国式スーツから派生して、どのようなスーツが誕生したかを紹介します。

イタリアンサルト

イタリアンサルトは、読んで字のごとくイタリアで生まれたスーツの様式です。英国式スーツを原型に、イタリアの風土やイタリア人のファッション嗜好に合わせて誕生しました。
ちなみにサルトとは、イタリア語で仕立て屋やテーラリング技術を意味し、英語ではtailorといいます。

イタリアンサルトは、伝統的な仕立て技術を用いて仕立てられており、男性らしいボディラインを美しく魅せられる、曲線美の美しいシルエットをしているのが特徴です。
そして、イタリアの気候に合わせて薄手で軽い生地が採用されており、機能性まで考慮されています。

北イタリアと南イタリアでスーツの特徴が異なるのも、イタリアンサルトの魅力です。北イタリアで生まれたミラノスタイルは、上品で英国式スーツ寄りの厳格な雰囲気が漂っており、ビジネスシーンに向いています。
一方の南イタリアで生まれたナポリスタイルは、遊び心が詰め込まれたファッショナブルなデザインが多く、パーティーなどで着用するのに向いています。

サックスーツ

サックスーツは、アメリカで誕生したスーツです。サックとは袋という意味で、その名のとおり袋のような見た目をしています。

英国式スーツと異なり、肩のラインはパッドのないナチュラルショルダーで、ボディのラインは胴に絞りを入れない、直線的なラインを採用しているのが特徴です。
ウエストをシェイプさせないシルエットを採用することで体型を隠し、スタイルアップにつなげています。

ゆったりとした見た目と着心地が魅力的なスタイルですが、スーツの要点は押さえており、フォーマルさは健在です。そのため、カジュアルな場面からビジネスシーンまで幅広く活用できます。

国別スーツの選ぶポイント

スーツはさまざまな国で独自のスタイルが確立されており、それぞれ異なった魅力が存在します。
そのため、どのスーツを選択すればよいかわからない人もいるでしょう。スーツ選びに悩んでいる場合は、以下のポイントを基準にするのがおすすめです。

定番のイギリス

スーツの好みがない、またはわからない場合は、オーソドックスな英国式スーツを選択すれば間違いありません。
信頼感や誠実感が漂う紳士的な印象を相手に与える服であるため、日本人の雰囲気にもマッチします。ビジネスシーンからパーティーまで、幅広い場面で活躍してくれるでしょう。

ちなみに、英国式スーツは幅広い体型の人におすすめです。また、ほどよいボリューム感が持たせられるため、スリムな体型な人でも問題なく着こなせます。

なりたい自分や相手に与えたい印象で決める

スーツを選ぶ際は、自分がどのようになりたいのか、またスーツを着た自分を見た相手にどのようなイメージを与えたいのか、あらかじめ決めておきましょう。
具体的に自分がいつ、どこで着用する予定なのか考えれば、はっきりとしたイメージを持ちやすいです。

知的で落ち着いた印象を相手に与えたいなら、イギリス式スーツがよいでしょう。また、ファッショナブルさと個性を全面に出したい場合はイタリアンサルト、カジュアルさを重視するならサックスーツがおすすめです。

トレンドも考慮してみる

国別でスーツを選ぶ場合は、各国のトレンドも考慮するのをおすすめします。過去に流行したスタイルのスーツは、どうしても古臭さを感じさせるため、避けた方がよいでしょう。

スーツのトレンドは、現代的なデザインとヨーロッパ様式のクラシカルなデザインが交互に流行しているのが特徴です。現在では、ファッション業界全体のリバイバルブームで、伝統的な英国式スーツが流行しています。

【スタイル別】コーディネートのポイント

スーツは様式によって、コーディネートのポイントが異なります。それぞれのスーツにどのようなアイテムを組み合わせればよいか順番に解説するので、ぜひコーディネートの参考にしてください。

ブリティッシュスタイル

英国紳士の正装であり、ビジネスシーンをはじめ、さまざまな場面で着用できます。英国式スーツのコーディネートのポイントは、以下のとおりです。

カッチリした男性的なシルエット

英国式スーツの特徴として、ジャケットのシルエットで重要な肩パッドが入っている点が挙げられます。男らしさを強調していますが、肩幅は苦しくならない程度にナチュラルです。
ウエストラインがタイトのため、身体のフィット感が重要になります。そのため、既製品でもきちんと試着をしてサイズを確認してください。必要に応じて、スーツのサイズの手直しもしましょう。

温かみがある重厚感のある生地

イギリスにはジョン・フォスターやスキャバルなど、世界を代表する生地メーカーが多数存在しています。
これは英国式スーツにおいて、生地が重視されているためです。

英国式スーツはシルエットが重要で、形が崩れてしまうと全体の雰囲気も崩れてしまいます。そのため、耐久性と復元力が高い生地が採用されるケースが多いです。
イギリス式スーツは伝統的かつベーシックなデザインのため、クラシカルな色や柄のものを選択するのをおすすめします。

知的な雰囲気を出すクレリックシャツ

スーツを着用する際は、シャツ選びも重要なポイントです。スーツとシャツが合わなければ、全体のコーディネートが崩れてしまう場合もあります。

英国式スーツを着用する場合、おすすめなのはクレリックシャツです。クレリックシャツとは襟と袖口がホワイト、
それ以外の部分は柄や色付きのシャツのことで、海外ではホワイトカラーシャツやカラーディファレントシャツとも呼ばれています。

色や柄が切り替えられているため、コーディネートが単調になりません。Vゾーンに赤や緑といった反対色を選択すれば、華やかさも演出できるでしょう。

シューズは重厚感があるものを選ぶ

スーツとシューズの関係は、切っても切れません。自分が着用するスーツのデザインや色、柄に合わせてシューズを選択しましょう。
英国式スーツの場合、伝統的かつ正統派な靴を選ぶのがよいでしょう。カッチリとした重厚感のあるものなら、ブリティッシュスタイルの知的な雰囲気にもマッチします。

おすすめなのは、1660年代にオックスフォード大学の学生が履き始めたオックスフォードシューズです。つま先からパンツの裾まで継ぎ目が無く、つながって見えるため、脚長効果も期待できます。

イタリアンクラシコ

イタリアンクラシコのクラシコはクラシック、つまり古典を意味します。
イタリアンクラシコとは、イタリアの定番的なスタイルを指し、その洗練されたデザインによって、現在までに世界各地で高い存在感を示してきました。

イタリアンクラシコのコーディネートのポイントは、以下のとおりです。

淡いカラーが定番

イタリアンクラシコには、アズーロと呼ばれる淡いカラーを採用するのが定番です。アローズは、イタリア語で空色を意味します。
このアローズに、ベージュやブラウンなど栗色系統のカラーを組み合わせるのが、イタリア人のコーディネートの鉄則です。
正統派のコーディネートから少しだけ外した配色は、上品さとカジュアルさを両立してくれます。

ただし、コーディネート初心者が明るいキャメルなどを取り入れると、バランスの崩れた配色になりがちなため、注意が必要です。

ジャストサイズで軽やかなシルエットに

イタリアンクラシコは、ナチュラルなシルエットとデザインが魅力です。
高く設定されたゴージ位置が、スーツのやわらかいラインを生み出しています。そのため、ジャストサイズでないと、イタリアンクラシコの魅力をすべて引き出すことはできません。

組み合わせはシンプルに

華やかな印象を持たれがちなイタリアンクラシコですが、初心者はシンプルなコーディネートから始めましょう。

スーツと同色のタイを合わせるなど、コーディネートを可能な限りシンプルにし、そのなかでファッショナブルさやノーブルさを見出すこともイタリアンクラシコの楽しみ方のひとつです。
また、配色だけでなく素材にこだわるのもよいでしょう。

シューズはマッケイ製法のものが主流

イタリアは、世界トップクラスのシューズ大国です。そのため、通年履けて、かつこなれた足元を演出できるブラウンレザーシューズは、イタリアンクラシコには欠かせません。
茶系のレザーシューズは、少しカジュアルでこなれた雰囲気を出せます。もし締まりのある印象をキープしたい場合は、少しトーンが暗めのものを選ぶとよいでしょう。

イタリアでは、より軽やかな履き心地のマッケイ製法が主流となっています。マッケイ製法とは、アッパーとインソール、アウトソールを一度に縫い付けるイタリアの伝統的な製法で、足を包み込むような柔らかい履き心地が特徴です。

アメリカントラディショナル

アメリカントラディショナルとは、クラシックなデザインと機能性を融合したファッションスタイルです。アメリカの歴史や文化が感じられるアイテムが多く、独自の魅力を持っています。
そんなアメリカントラディショナルのコーディネートのポイントは、以下のとおりです。

スーツの基本色を踏襲

アメリカントラディショナルは、1960年代に流行したアイビーファッションをルーツに持ちます。
アイビーファッション、またはアイビールックとは、アメリカの8大学からなる、フットボール連盟アイビーリーグの学生達が好んで着ていたファッションのことです。

カラーはネイビーやグレーなど、スーツにとって基本の配色を踏襲しています。若者世代はもちろん、40代以降の男性でも着こなすことが可能です。

ゆったりしたシルエット

ウエストに絞りがほとんどない、ボックスシルエットがアメリカントラディショナルの特徴です。
カジュアルさがありながら、全体的に落ち着きのある雰囲気のため、ビジネスシーンでも着用できます。

また、肩パッドも極力入れない、入れたとしても薄いものを採用するなど、機能性を重視した余裕のある作りのため、体格がよい人でも窮屈さを感じることなく着こなせるでしょう。

ボタンダウンのシャツがマッチ

アメリカントラディショナルに合わせるシャツとしては、ボタンダウンシャツがおすすめです。

ボタンダウンシャツとは、襟の先に小さなボタンが付いているシャツのことです。実用性を重視したスポーティーなシャツですが、アメリカントラディショナルの雰囲気にマッチします。

ネクタイやジャケットとの相性もよく、襟元に美しいロールが生まれるため、ビジネスシーンでも採用しやすいでしょう。

シューズはプレーントゥで

シューズはプレーントゥをはじめとする、アメリカらしいボリューミーな靴がおすすめです。
プレーントゥとは、つま先部分に縫製や飾り穴が施されていないデザインの総称で、スーツに合わせる革靴の定番として多くの国で愛用されています。

また、ピカピカに磨き上げた山羊革の靴と合わせても、アメリカらしさを演出できるでしょう。

初心者が知っておきたいオーダースーツについて

高級だったオーダースーツも、今では1着あたり2万円台から作れるようになっています。
スーツはサイズが合うだけで着用者の印象が大きく変化するため、採寸をしてもらい、自分の体にあった一着を仕立ててもらうオーダースーツがおすすめです。

ちなみに、オーダースーツは長持ちするという特徴もあります。これは身体にフィットするスーツはシワやヨレ、生地の擦れなどが発生しにくく、生地に負担がかからないためです。
ただし、漠然とオーダースーツを注文するだけでは、理想のスーツは手に入りません。目的に合ったスーツをオーダーするには、使用目的やどんな場面で着用するのか、テーラーに伝えることが重要です。

まとめ

ブリティッシュスタイルをはじめとする、各種スーツの特徴や着こなしのポイントについて取り上げてきました。
スーツはそれぞれ発祥の地域の気候や国民性が反映されており、異なった魅力に溢れています。

自分がどのような場面でスーツを着用するのか、また自分の体型に合うデザインはどれかなどを考慮しつつ、理想のスーツを探してみましょう。

スーツ探しに悩んでいる場合は、オーダースーツの注文もおすすめです。
全国に90店舗を展開しているオーダースーツ専門店であるORDER BOXでは、多種多様な生地とデザインを用意しており、クライアント一人ひとりの理想に合わせたスーツを用意します。

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