スーツの着こなしを考えたときに、まず初めに考えるのはスーツ・シャツ・ネクタイなどの色や柄ではないでしょうか。そしてそのバランスを意識してスタイリングをすることが多いでしょう。
しかし、自分の好みはすぐに変わるものではないので、コーディネートが同じようなものになってしまいがちです。そんなときは、ピークドラペルのスーツを選ぶことをおすすめします。
今回はピークドラペルの着こなし方や、どんな印象を与えるのかについて詳しくお話ししていきます。
ピークドラペルとは
ピークドラペルとは、尖った形の襟のことです。日本語では、剣襟とも呼ばれています。もともとはフォーマルなスーツに使われることがほとんどでしたが、現在ではジャケットなどにも使用されるようになりました。
ですが、今もフォーマルのイメージが強く、礼服のことを剣ものと呼ぶほどダブルスーツでは当たり前の襟の形です。ビジネススーツに使われているノッチドラペルより華やかさがあるので、おしゃれを楽しみたい方におすすめの襟です。
ほかの襟ともっとも違うのは、剣襟と呼ばれるほど尖った下衿です。しっかり突き出しているので、少し強いイメージを与えます。フォーマルな場ではなくても、少し華やかさやおしゃれを演出したいときはピークドラペルのジャケットを着るとよいでしょう。
ピークドラペル以外のラペルの種類
ピークドラペル以外にもラペルの種類はさまざまあります。見た目の印象が大きく変わるので、それぞれの使用シーンや特徴を理解しておきましょう。
ノッチドラペル
ノッチドラペルはもっとも一般的な襟型です。ノッチとはV字型の切り込みという意味を持ち、その名のとおり上衿と下衿の間にV字の切り込みが入っています。
シングルジャケットに多く使われ、カジュアルシーンやビジネスシーン、冠婚葬祭など幅広いシーンで活用できます。そのため、何を着てよいか分からなければ、とりあえずノッチドラペルのジャケットを着れば問題ないでしょう。
ノッチドラペルよりやや襟部分が細い、ノッチドスリムという襟型もあります。ノッチドスリムはモード感のある襟型なので、少し印象を変えたい方におすすめです。
セミノッチドラペル
セミノッチドラペルは、ノッチドラペルの下衿部分を少しだけ上に尖らせた襟型です。ピッチドラペルほどの尖りはありませんが、ノッチドラペルよりスマートな大人っぽさを感じさせます。
シングルジャケットの襟型としてフォーマルな場面で使われることが多いですが、ノッチドラペルの延長線でビジネススーツに使われることもあります。
ピッチドラペルにすると大きく印象が変わりますが、そこまで勇気がない方はセミノッチドラペルから使ってみるとよいでしょう。
セミピークドラペル
セミピークドラペルは、下衿の先が若干丸みをおびていて、襟の角度もピークドラペルより水平らになっているのが特徴です。ピークドラペルと比べると華やかすぎずやわらかい印象なので、スタイリッシュなスタイルからフォーマルなスタイルまで活用できます。
襟の形は、セミノッチドラペルより下衿の面積が広く、ピークドラペルより襟の鋭さが控えめな形をしています。使いやすいタイプの襟型ですが、現在ではあまり見かけることが少なくなりました。古いタイプのジャケットなどで見ることができるでしょう。
フィッシュマウスラペル
フィッシュマウスラペルは、襟のきざみが魚の口のように見えることからこの名前が付けられました。
ピークドラペルの下衿を少し水平にしたものがセミピークドラペルで、セミピークドラペルの上衿が丸みをおびたのがフィッシュマウスラペルです。少しずつの変化ですが、襟の違いによって全体の印象が大きく変わります。
フィッシュマウスラペルは比較的やわらかい印象なので、カジュアルスタイルやビジネススーツでも使用可能です。セミノッチ・セミピークド・フィッシュマウスという、似ているようで違うタイプの襟を使いこなすと、ワンランク上のおしゃれをすることができるでしょう。
ローリングダウンラペル
ローリングダウンラペルは、第一ボタンに襟が被っていて、折り返すような形になっている襟型です。段返りボタンとも呼ばれていて、第一ボタンは留めずに着るのがマナーです。第一ボタンを留めてしまうと襟の形が崩れてしまうので注意しましょう。
堅すぎず、大人びた印象の襟型なので、ビジネスシーンやカジュアルシーンで使用可能です。トラッドスーツというウエストが縛られた形のスーツで主に使用され、スーツ以外にもチェスターコートなどで使用されます。一般的な襟よりファッション性の高いタイプの襟型です。
ノーカラー
ノーカラーは、襟がなくカーディガンのような見た目のデザインです。カジュアルな見た目なので、Tシャツなどと相性がいいです。
近年人気が高まっている襟型で、ノーカラージャケットとパンツのセットアップなども販売されています。中に着るインナーで印象が変わるので、カジュアルのなかに少しエレガンスさを入れた印象にすることもできるでしょう。
ピークドラペルが与える印象
日本人は、ビジネスシーンやフォーマルなシーン以外で、あまりスーツを着ません。しかし、スーツはもっとも男性を格好よく見せてくれるものなので、普段から着ていると大人な印象を与えることができるでしょう。
なかでもピークドラペルのスーツは、ビジネススーツと大きくイメージが変わるので、ピークドラペルのスーツが全体的にどのような印象になるのか、気になるかと思います。ピークドラペルを着ることで相手にどんな印象を与えるのか、具体的にご紹介します。
華やかさ
ピークドラペルは、もともとフォーマルなシーンで着られるモーニングコートや、ダブルジャケットに使われる襟型です。そのため、華やかな装いであるという印象が強いです。
装飾のイメージがある襟型のため、基本的にビジネスシーンではNGとされてきました。現在ではさまざまな装いをOKとする会社が増えたため、ビジネスシーンでも使用されています。
しかし、堅い職種の方や社外の方と関わることが多い方は、ピークドラペルをビジネスシーンで使用するのは控えた方がよいでしょう。
威厳・重厚感
ピークドラペルは、社会的地位の高い方や年配の方が着ることの多いダブルブレストのジャケットに使用されています。ダブルブレストとは、ジャケットの前部分の重なりが広く、ボタンが2列に付いているものです。
そのような敷居の高い方が着ていることで、威厳感や、重厚感があるといったイメージを持たれがちです。そのため、ご自身ではカジュアルに着ているつもりでも、相手には圧力を感じさせてしまうことがあります。
艶っぽさ
襟部分が細いピークドラペルは、艶っぽさを感じさせます。襟先が尖っているので、艶っぽさと同時に、男らしい強気な印象になるのです。
襟先が横に開いているので、視覚効果によりウエストが細く見えます。胸板も厚く見えるので、体に自信がない方もピークドラペルを着ることで、大人の男性に近づくことができるでしょう。
ピークドラペルはどんなシーンに向いている?
ピークドラペルは、華やかで艶やかな印象を与えることが分かりました。では、実際に着用するとしたらどんなシーンで着るのが最適なのでしょうか。
フォーマルなシーン
モーニングスーツ・燕尾服・タキシードなどでよく使用されるピークドラペルは、フォーマルなシーンに向いています。新郎や父親として出席する結婚式・式典・高級ホテルでのパーティーなどで着用するとよいでしょう。
ピークドラペルのブラックスーツは、結婚式に招待されたときやレストランに行くときに重宝します。ノッチドラペルのブラックスーツより硬派なイメージになるので、一着持っておくとさまざまな場面で使うことができます。
ただし、弔辞ではピークドラペルのスーツを着るのは避けましょう。喪に服す場なので、おしゃれをする場所ではありません。場面を考えて着るようにしてください。
プライベートシーン
ピークドラペルのスーツは、フォーマルな印象が強い服装です。そのため、プライベートシーンで着用したいときは、シンプルでカジュアルな素材のものを選びましょう。
カジュアル素材のスーツというのは、ポリエステルやウールのもの、綿や麻などが使われたスーツのことです。光沢感が少ないため、高級感がなくカジュアルに着ることができます。
柄物のジャケットを選択するのもよいでしょう。黒のジャケットは避け、チェック柄やストライプ柄を選ぶと遊び心があります。
また、ジャケットに合わせるシャツやパンツもカジュアルなものを選ぶようにしましょう。おしゃれかつ、軽やかな印象になります。
ビジネスシーン
華やかな装いのピークドラペルのスーツを、ビジネスシーンでも着用したいと思う方もいるでしょう。しかし、結論から言ってビジネスシーンでは着用しないことをおすすめします。
なぜなら、特別感があるピークドラペルのスーツは主張が強すぎてしまうからです。ビジネスシーンでもおしゃれをしたい、と思うかもしれませんが、実際はおしゃれをしに行く場所ではなく仕事をする場所です。
周りに不快な思いをさせないためにも、ピッチドラペルの着用は避けた方がよいでしょう。ただし、欧米ではビジネスシーンでピークドラペルのスーツを着ることが許されているため、服装の制限がない職場では着用しても問題ない可能性があります。
どうしても着用したい場合は、いきなりピークドラペルを着るのではなく、セミピークドラペルを着用することをおすすめします。
ピークドラペルをおしゃれに着こなすには
ピークドラペルを着るだけで一気におしゃれになりますが、インパクトのあるアイテムだからこそ、選び方に気をつけなくてはいけません。正しく着こなせば英国紳士のような、スタイリッシュでかっこいいファッションをすることができます。
そこでここからは、ピークドラペルを着たことがない方のために、ピークドラペルのおしゃれな着こなし方をご紹介します。
自分にぴったり合ったサイズを選ぶ
ピークドラペルを購入する際には、自分にぴったり合ったサイズを選ぶようにしましょう。これはピークドラペルに限った話ではありませんが、特に紳士的なイメージのあるピークドラペルは、しっかりサイズが合っていないとだらしない印象になります。
自分のサイズに合っていないものを購入しないためには、自分だけのオーダーメイドスーツを頼むことをおすすめします。
既製品を購入する場合は、専門のスタッフに採寸してもらったうえで購入するようにしてください。少し細めのサイズを選ぶと、よりスマートな印象になるでしょう。
サイズだけではなく色にもこだわる
ピークドラペルのスーツを選ぶときは、サイズだけではなく、色にもこだわるようにしましょう。
ドレッシーなイメージが強いピークドラペルは、派手な色合いのものを選ぶと主張が強すぎてしまいます。そこでおすすめなのは、ダークカラーのものです。黒・ネイビー・グレー・ブラウンのものは、落ち着いた印象にすることができます。
ダークカラーのスーツに白シャツを着るのが王道スタイルです。シンプルでありながら、男性の力強さを表現しているスタイルです。
カラーの組み合わせに迷ったときには、上記の組み合わせを選びましょう。この組み合わせで失敗することはありません。少し自分らしさを加えたい場合は、タイピン・ポケットチーフ・ネクタイなどに個性を出すとよいでしょう。
無地のものを選ぶ
ピークドラペルのスーツは、無地のものを選ぶのが無難です。無地であればコーディネートの幅が広がります。
中に着るインナーは、白の爽やかなシャツ・カジュアルなTシャツ・ニットなど色々なものが合わせられます。ピークドラペルだけで華やかさは十分なので、インナーはシンプルなものを選びましょう。
まとめ
今回は、ピークドラペルについてさまざまな視点からお話ししてきました。ほかの襟型と比べて1番敷居の高い服装ですが、しっかりと着こなすことができれば、大人の男性としてワンランクアップすることができます。
華やかでしっかりとした印象を与えるので、気合を入れたいときにピークドラペルを着ると、雰囲気を変えることができるでしょう。
今は、ビジネスシーンもファッションに対して寛容的になったので、昔より堅苦しい服装を求められなくなりました。中には、私服で出社することが許されている企業もあります。
カジュアルな服装での出社が許されているからこそ、気持ちを引き締めたいときにスーツを着ることで気合が入ります。着る場面を選んで、日々の生活にスーツを取り入れてみましょう。