礼服と喪服の違いを解説!男女によっても異なる?

礼服と喪服の違いを説明できるでしょうか?

漠然と「違う」ということは理解していても、2つの違いを明確に説明できる人は少ないかもしれません。

礼服と喪服の違いを理解しておけば、冠婚葬祭のときにも迷うことがありません。
今回は、礼服と喪服の違いについて、わかりやすく解説します。

礼服と喪服の違い

礼服とは、冠婚葬祭で着る「正装」のことをいいます。

今では結婚式とお葬式以外身近ではありませんが、冠婚葬祭とはもともと元服・婚礼・葬儀・祖先の祭礼を指し、礼服はこれらの行事の際に着る服ということです。

冠婚葬祭のうち「葬」にあたるお葬式・お通夜に出席する際に着る礼服は「喪服」といいます。礼服という広いジャンルのなかに、喪服があるということになりますね。

喪服が礼服の一種ということから、2つに大きな違いはありません。礼服用としてブラックスーツを購入し、喪服として使うことも可能です。一般的にビジネスシーンで着用するスーツと違い、礼服として販売されているものは生地の光沢感を抑えたデザインとなっています。

とくに喪服はビジネススーツの黒よりも濃い「漆黒」の色が特徴です。「一見してわからない」と思われるかもしれませんが、葬儀の場に参列すれば見た目の違いは明らかです。

黒いビジネススーツを着用して葬儀に参列した場合、ほかの参列者と並ぶと色の違いから礼服でないことが一目でわかってしまうため、注意しましょう。

礼服の種類

礼服には正礼装・準礼装・略礼装の3種類があります。
それぞれの違いを理解しておきましょう。

正礼装

正礼装は、最も格が高い礼装です。

結婚式では正礼装は新郎や両家の父親、媒酌人といった主役と主役に近い立場の人が着用します。入学・卒業式などでは、主催者・主賓となる立場の人が着る服であり、弔事では喪主が着用します。着用シーンとしては多くありませんが、人生のうちに数回は着ることがあるでしょう。

男性の正礼装は、さらに3つに分けることができます。

モーニングコート・燕尾服(テールコート)・タキシードの3つがあり、行事の時間帯によって着用できるものが変わってくるため注意しましょう。

モーニングコート

日中の行事に出席する際には、モーニングコートが正礼装となります。

モーニングコートは裾の部分が前から後ろにかけてカーブを描いてカットされた服です。襟先が折り返されたウィングカラーのシャツ、黒の襟付きのベストを合わせて着用するのが伝統的な着こなしですが、日中の結婚式などではベストをグレーや淡い色合いのものにすることもあります。

女性は衿元の詰まった長袖、あるいは七分丈以上のアフタヌーンドレスで、肌の露出が少ないものが正礼装となります。ワンピースのほか、アンサンブルドレスや上下同色・同素材のスーツなども正礼装とみなされます。

燕尾服(テールコート)

燕尾服(テールコート)は18時以降(冬場は17時)の行事で着用する正礼装です。
燕の尾のような裾が特徴となっていて、スタイリングはモノトーンで揃えます。

女性はイブニングドレスが正礼装となります。イブニングドレスはアフタヌーンドレスと違い袖がなく、肩や胸元を出したロングドレスです。

準礼装

正礼装の次に格式が高い服装が準礼装です。

準礼装は正礼装よりも着用の機会が多くあります。主賓または上司として結婚式や披露宴に招待された際には準礼装を着用して参加しましょう。また、親族の場合にも着用できます。

準礼装にはディレクターズスーツ・タキシードがあります。

ディレクターズスーツ

ディレクターズスーツは、日中に着用する順礼装です。モーニングの丈を短くした見た目となっていて、黒のジャケットとストライプのスラックスという組み合わせです。

女性はセミアフタヌーンドレスが準礼装となります。スカート丈はロングに限らず、ひざ丈やふくらはぎあたりまでの長さのものもあります。デザインの自由度はアフタヌーンドレス・イブニングドレスより高くなるため、さまざまなデザインのものがあります。

タキシード

タキシードは本来、夜の時間帯に着用する順礼服でしたが、最近は日中でも着用されることが多くなりました。とくに結婚式の際には、時間帯にとらわれずよく着られています。

ショールカラーという角のない襟にボウタイ(蝶ネクタイ)、サイドにラインの入ったパンツ組み合わせます。ベルトの代わりにカマーバンドを着ける着こなしが特徴的です。

タキシードに対応する女性の服装はディナードレス・カクテルドレスになります。ディナードレスは衿がなく袖のあるロングドレスで、カクテルドレスはイブニングドレスを簡略化したもので、ミディ丈のものが一般的です。

略礼装

略礼装は昼夜を問わず、ブラックスーツ・ダークスーツとなります。
現代ではこちらが最も目にする機会が多いでしょう。結婚式では親族のほか、一般のゲストも着用できます。

弔事では、一般弔問客が喪服として艶のないブラックスーツあるいはダークスーツを着用します。現代では喪主であってもブラックスーツを着用する人が多くなっています。また、地域によっては和装で行う場合もあります。

喪服の種類

礼服にさまざまな種類があるように、喪服にも種類・格があります。

先にもお話ししたように、遺族・弔問客ともにブラックスーツを着用するする人が増えているとはいえ、理解を深めておいて損はありません。

喪服は格式の高い順に正喪服・準喪服・略喪服となります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

正喪服

洋装の正喪服はモーニングコートとなります。葬儀や告別式で喪主や3親等以内の親族が着るものです。

モーニングというと結婚式のイメージが強く、葬儀の場で着ることを意外に思われた方もいるかもしれません。しかしモーニング自体は慶弔兼用のものも多く、葬儀や告別式でも問題なく着用できます。ただし、ベストには白襟をつけずに、ズボンにはサスペンダーを使用するスタイルとなります。ワイシャツは白、ネクタイは黒く無地のものを合わせます。

和装の場合には、紋付きの羽織袴が正喪服になりますが、今では伝統として受け継いでいるなどの理由がある地域を除いて着る人は少なくなっています。

女性の場合には、シルク・ウールなどの艶感のない素材のワンピース、アンサンブルスーツが一般的です。

準喪服

もともと準喪服は弔問客が着用するものでしたが、現在は喪主や親族もブラックスーツを着用することが多くなっています。喪服というとブラックスーツをイメージされる人が多いでしょう。それほど一般的になっているということです。

ブラックスーツは黒の色が濃く、艶がなくマットな質感でなければなりません。立場を問わず着用できるため、クローゼットに用意しておけば急な訃報にも慌てることがないでしょう。

準喪服となるブラックスーツは、シングル・ダブルのどちらでも問題ありません。モーニングのときと同様に、白いワイシャツと黒無地のネクタイ、黒い靴下を合わせて着用しましょう。ブラックスーツは光沢がなく、黒が濃いものほどフォーマルな印象となります。

ブラックスーツは年間に一度も袖に手を通さないことがあっても不思議ではありません。長く着ることを見越して保管に気を付ければ、10年経っても問題なく着ることができます。

5年後、10年後に着用する可能性を考えて、シンプルで流行にとらわれないデザインのものを選ぶとよいでしょう。また、体形の変化も見越してゆったりとしたサイズのものをエラうぶことをおすすめします。

女性の場合には、シルク・ウールなどの艶感のない素材のワンピース、アンサンブルスーツと、洋装の場合には正喪服とほとんど違いがありません。

略喪服

略喪服は黒やダークグレー、濃紺など暗い色のスーツのことをいいます。目立たない色合いで艶がなく、無地であれば必ずしも黒である必要はありません。

略喪服を着用するシーンとしては、お通夜や三回忌以降の年忌法要があります。
また、喪主側から「平服で」と指定があった場合にも、暗い色のスーツが適しています。

急な訃報を受けて「とにかく急いで駆け付けた」といった意味で「お通夜は略喪服で参列することが望ましい」と考える人もいるくらいで、暗い色のスーツであればマナー違反にはなりません。

女性の場合にも同様に、黒やダークグレーのスーツ、ワンピースであれば、略喪服としてみなされます。ただし、カジュアルなデザインのものはできるだけ避けるのが望ましいといえます。

ビジネススーツとの違い

ビジネススーツと喪服の最も大きな違いは、黒の濃さです。
礼服とビジネススーツは、同じ黒といっても明らかに異なります。

とくに喪服は「濃染加工」という「より黒く、暗い色に見せる」加工を施されているものが多くあります。濃染加工とは繊維表面に低屈折率の樹脂皮膜を形成させ、光の正反射を少なくしたものです。

反対に、ビジネススーツは明るい場所で見るとグレーに近い黒に見えるものが多くなっています。喪服と比べると薄い黒となり、柔らかい印象があります。同じ黒といってもビジネススーツの黒とはまったく違うのです。葬儀に参列するときになって慌てないよう、あらかじめ喪服は準備しておきましょう。

しかし、葬儀や告別式に参列できずに通夜のみ参列する場合には、略喪服としてダークスーツで参列してもかまいません。「知らせを聞いて駆け付けた」という意味で、略喪服でも問題ないのです。

生地について

弔事において最も一般的に着用されるのが準礼装で、男性の場合はブラックスーツが該当します。弔事用のブラックスーツは漆黒に近いもので、ビジネススーツとして売られている光沢や艶のある一般的なブラックスーツとは異なるので間違えないようにしましょう。

素材について

ビジネススーツはウールとポリエステルを使って仕立てることが多く、喪服はウール100%のものが主流です。

ただ、従来はウール100%のものが「より黒く染まる」といわれていましたが、実際にはポリエステルでも染まり具合に違いはないようです。ポリエステルは化学繊維であり、価格も安いことから礼服・喪服にはあまり使用されていませんが、耐久性の面で非常に優秀です。

そのため、今後は礼服・喪服においてもポリエステルの配合が多いブラックスーツは増えてくるかもしれません。

喪服は夏と冬のシーズンによっても違いがあり、夏用は通気性がよく軽い素材が使用され、主にサマーウールや麻、モヘア、綿などの素材が選ばれています。背中の部分の裏地は付いていないため、涼しく着ることができるでしょう。対して冬用の喪服は、厚手でしっかりとした素材となっています。

春夏と秋冬で一着ずつ持っていれば安心ですが、予算の兼ね合いなどで難しい場合には3シーズンに対応するものを選んでおくと安心です。喪服であっても、やはり季節に適したものを選ぶことで見た目の印象もよくなりますし、何より快適に過ごすことができます。

デザインについて

ビジネススーツと喪服はデザインにも違いがあります。

ビジネススーツは日常的に着用するため、体形に合わせてフィット感のあるシルエットとなります。対して喪服は頻繁に着用するものではありません。そのため、5年、10年経って体形が変化しても着られるように、ゆとりのあるシルエットとなっているのが特徴です。

シングル、ダブルのどちらでも大丈夫ですが、やはり「ビジネスシーンでも見慣れたシングルの方が着やすい」という人は多いのではないでしょうか。しかし、年を重ねて恰幅がよくなってくると、ゆったりとしたダブルも似合うようになってきます。体型をカバーしやすいので、おなか回りが気になる人にもおすすめです。

まとめ

この記事では、冠婚葬祭の際の服装すべてを指す「礼服」と、葬儀や告別式などのシーンで着用する「喪服」の違いについてお話ししました。

シーンに合わせて服装を整えるのは大人のマナーです。とはいえ「マナーを守るために」と考えすぎてしまうと、服を着る楽しみも薄れてしまうもの。「マナーを理解し、シーンに合わせた服選びができるよう、知識を持っておく」と気軽に考えるとよいでしょう。

マナーとともに、ご自身の好みや体形、目指したい雰囲気などもイメージし、特別な日の服選びをしてみてはいかがでしょうか。